海岸松の大被害、その影響
2009年1月24日に暴風雨「クラウス」がフランス南部の大西洋側を襲った。南西部のランド県はヨーロッパ一の大きさを誇る海岸松の植林による林業が大きな産業として知られている。この日、時速180kmの大風を吹かせた暴風雨クラウスは25万ヘクタールの森林地帯に被害を出し、なかでも海岸松に大きな打撃を与えた。一日で破壊された海岸松は約4000万立方メートルにもおよび、この数字はランド県が産出する松材の5年分にあたるという。暴風雨から2年経つ2011年の今も、森林の復活は遅々として進まず、公共用地に関する植林のための150万ユーロの援助金が予定されているだけで、災害を受けた私有地については何ら見込まれておらず破産状態の林業農家が少なくない。(TF1 TV)
ランド県は、湿地帯で人間も住めず栽培もできなかった土地に、ポンプのように地中の水を吸い上げる海岸松を植えることで、地表を乾かし、人を住まわせ、野菜栽培を始め、また松のおかげでフランス最大の林業が発達させることができたという逸話のとおり、150年来、海岸松の恩恵を受けて人間の生活を成り立たせてきた土地である。ランド県の松の大災害は、林業に携わる3万4千人の人々の経済のみならず、土地のエコシステムへ大きく影響をしはじめる危険性を孕んでいるのだ。(S.H.)