Day48、原油汚染
アメリカのメキシコ湾の原油汚染が320kmに渡ってひろがっているとフランスのきょうのニュースが伝えた。アメリカのNBCニュースには、分厚い原油の波の中でもがいているペリカンが幾度もまた何羽も映し出されていたが、悲惨な汚染のニュースの中で目を引いたのは、海岸周辺の住民のプロテストだった。さながら無名戦士の墓地のように、今作ったばかりといったかんじの白い十字架が何本も空き地にならび、その上に黒々とペンキで書かれているのは死んだ人の名前ではなくて、「Fishing」、「Pelicans」、「The Beach」・・・。端的にまた簡潔に、海辺の生活と自然が死ぬ悲嘆を表現していて、なんとも胸が締め付けられるサイトスペシフィック・インスタレーションだ。(S.H.)
USA原油汚染
41日間、毎日毎回、フランスのニュースが時間を割いて追いかけているニュースは、アメリカのメキシコ湾の石油汚染だ。もちろんフランスだけではなく世界中が注目している史上最大の環境汚染であるが、どういった方法で油田からの噴出が食い止められ、将来この海をどんなかたちで浄化できるのか。失われつつあるこの海の原形は、いったい取り戻せるのだろうか。ほんとうの意味で人間の最先端科学技術の真価が問われるのは、こうした自然を相手にしたときなのではないだろうか。 メキシコ湾海底油田の原油汚染ビデオ。BPのトップ・キル作戦失敗 - Video from ITN NEWS (UK) : US oil spill ‘top kill’ efforts fail 「アメリカ政府はなぜ、驚くほど無力?」と、きのうのニュースはなぞを伝えようとしたが、ワシントンのフランス駐在員の説明では、どうも石油会社BP に事後処理責任をすべてとらせようとしたことが現状のおおもとらしい。BPは実際、何度も食い止めようとした方策が失敗した。「元から危険とわかっている海底油田開発にかんし、BPは何も事故対策を持たないアプランティ・ソルシエ(魔法使いの見習い)だった」とはフランス2・テレビの発言である。アプランティ・ソルシエとはフランス人がよく使う比喩で、自分の魔法がかってに一人歩きして止められなくなる、自分の能力以上のことをして災害を招くことをいう。 1989年3月、エクソン・ヴァルデーズの180000トンの原油を積んだタンカーが事故を起こし、原油がアラスカの海を汚染した。この事故の際も動物とその環境が大きな被害を受けた。アシカの群れが油の海に取り巻かれてないているのをテレビのチョッパーが映し出し、それだけで胸が痛んだが、「それだけで」とここでいうのは、アメリカのエコロジストが10年後、取材でアラスカを訪れ、海岸の石を拾い上げてみると、その下はまだ真っ黒な石油が層をなしていて現実の汚染のありさまをまざまざと見せつけていたからだ。 BPのメキシコ湾事故では、トップ・キルの失敗で原油の噴出量が増え、一日2百万から5百万リットルという原油(フランステレビ発表)が流出している。BPがほかのストラクチャーをつくりそこから原油をくみ上げるとしているが、くみ上げステーションができるのは8月だという。またすぐにでも応急手当はするという話しだが、今までの失敗からするとバンドエイド程度のものだろう。ステーションができる8月まで、いったいどれだけの原油がどこまで汚染するのだろうか。 ABC NEWS 5月31日付 「1億700万ガロン流出」(English version)
アクチュアリティ
天候 - 5月4日。フランスは南のピレネ、リヨン、マッスィブ・サントラルなどの標高700m以上で降雪。先週末は30度の夏日、今日は積雪20cmの真冬となり、ラッセル車が雪を掻き分けている。ロワール地方、オート・ロワール地方、またカルカソンも、先週と30度近くの気温差を記録した。北スペインも積雪で混乱している。