文科省が国立大学の文科系、教員養成を廃止するよう大学側へ要請した。全体主義、反知性主義に向かう政府の方針に、反駁し揺れる大学の姿が浮き彫りになっている。

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毎日ジャーナル「岐路に立つ国立大文系」

抜粋:文部科学省は国立大学86校に、人文社会科学系や教員養成系学部・大学院は「組織の廃止や社会的要請の高い分野に転換」するよう求めた。同時に、文科省は来年度以降、改革の進展状況に応じて、国立大学への運営費交付金(今年度約1兆1000億円)の配分に「強弱」をつける方針。「評価の基準」は、社会に役立っているかどうかだ。理系に比べ貢献の度合いが見えづらい文系学部、とりわけ地方国立大への影響は、深刻と指摘される。

・全体主義国家への危機 佐和隆光・滋賀大学学長、「・・・これまでも文系学部が有害無益と見なされた時代があった。戦争末期、地方の高等商業学校は工業学校への転換を迫られた。1960年、岸信介内閣の文相が国立大学の法文系学部を廃して、理工系のみの教育に特化すべきだと論じた。産業界から強い要請があったことに加え、60年安保での激しい学生デモも無縁ではない。文系で磨かれる批判精神に臆した。・・・」

日本学術会議が、「人文・社会科学の軽視は大学教育全体を底の浅いものにしかねない」と批判声明

記者の目:戦後70年夏 反知性主義を考える=鈴木英生(東京学芸部)

続報真相 国立大文系が消滅? 文科省、組織改編促す

「政府は大学を工場みたいにしたいんですかね。工場やったら設計図通りに製品ができるけど、教育機関ってそんなビジネスモデルみたいにいきません」。京都大名誉教授で、関西大東京センター長も務める竹内洋さん(教育社会学)は文科省が進める国立大学改革への疑問を隠さない。・・・

・・・産業界の本音はどこにあるのか。日本を代表する大手メーカーの首脳に聞いてみると、文系軽視には意外にも批判的なのだ。「国立大から文系をなくそうなんて愚の骨頂です。我々が学生に求めているのは論理的に問題を解決する力、人の話を理解する能力、つまり文系でこそ学べる教養です。英語は話せた方がいいに決まっていますが、人とコミュニケーションがとれなければ、何にもならないじゃないですか。スキルだけ持った学生なんて企業はいらない。必要なスキルなら、入社後に企業側が教えればいい」・・・

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