9月も近づき、夏休みから三々五々帰還中の政府官僚たちが、新年度を前にすでに国民の批評の的となっている。この5月、大統領選挙で勝利した社会党オーランド大統領と内閣を采配するエロー首相の人気に関する世論調査が発表された。オーランド大統領は当選時から11%減少、またエロー首相も9%の減少と、結果はなかなか厳しい。国民の意見を街頭インタビューでは、「10年の景気不振を回復するにはどんなに政治手腕があっても100日でははまだ時期尚早でしょう」といったような慎重な意見が返ってきた。

[ロム]

問題はこの夏に起きたいくつかの事件だ。15日ほど前、ヴィルヌーヴダスクで違法に市の土地に居住していたロム(欧州を渡り歩く放浪の民)が、強制立ち退きをさせられた。オーランド大統領は選挙公約の中で、ロムや放浪する人々に関し、「ヨーロッパ人として扱い、(サルコジ政権が行ったような)国外追放などの強制処置は行わない」としていたのに、ヴィルヌーヴダスクのロムたちは強制立ち退きの上、住んでいたバラックなどはすべて強制撤去されて住むところをまったく失った。それに加えまた昨日の明け方5時、警察が出動し、パリ郊外のエソンヌ県でも、郊外電車RER線の線路脇にスクラップなどを集めて居住していたロム70人、40世帯が強制立ち退きをさせられた。線路沿いの非衛生な場所で非衛生に生活をしているという理由からだ。こうした劣悪なかれらの生活環境にかんし、内務大臣マニュエル・ヴァルスは「まったく耐えられないような状況」と形容、強制立ち退きを認めた。ロムたちは身の回りのものを腕にかかえられるだけ取りまとめて、警察に連行されて移動し、3、4日ホテル住まいが決まっているが、そのあとはまったく行く当てがない。<エソンヌ県のロムの家族やルーマニア人との連帯協会>というロムたちを救済する目的で仕事をしている協会は、「子供たちは通学をしているし、他の土地を求めて遠くへ行くことは非常に難しい。寄付金がある限りは何とか彼らの役に立ちたい」というが、生易しいことではない。ロムが居ついている場所の周辺の住民たちは、「彼らが公園などにいる場合は、子供を一人で遊びにやるわけには行かないですよね」、「別に何かがおきたりするわけではないんですが、いろいろ気になります」。

こうして強制立ち退きをさせられたロムたちは、その後どのような生活をしているのだろうか。ヴィルヌーヴダスクのバラックから立ち退きをさせられたロムたちは、どこにも行く当てが無く、町の教会のそばの公園で寝起きをするようになった。しかし、ここには水もトイレもないので、体を洗えず、またしかたなく外で排泄をする。「まだ前居たバラックのほうがよかった。シャワーがあって体くらいは洗えましたから」と悔やむロム。一人ひとり法的に手順を踏むというが、オーランド政権はこうした人たちの生活保護にかんし、現実にどういった解決策をとるのだろうか。

[失業]

8月現在のフランスの失業者数、2987100人。6月から比べ、41300増。25歳以下の新卒者と高年齢者の失業が特に増えている。長いあいだ経済成長を見込めず、その間の契約更新がたたり大企業も人員のだぶつきを整理せざるを得ない時期が近づいており、300万人を超すのは時間の問題だ。失業者数が300万人を超過するのは1990年以来。

[原子力発電]

昨日、産業大臣のアルノー・モントブールが、エネルギー問題に関して、「原子力発電は未来も続く重要な産業」と発言。エコロジー党の大きな反感を買った。

オーランド大統領は、「2025年までには原子力発電を75%減らす」と選挙公約で原子力発電の大幅縮小を謳った。その公約に反し、「未来の重要な産業」としたモントブール発言は、あちこちのメディアが話題にとりあげ政府の方針をもう一度まな板に乗せるかたちとなった。エコロジー党は原子力発電の全面停止を提唱しており、すでに大統領選挙の最中も、優柔なオーランドとの折り合いが悪かった。フランス2TVに出演したエロー首相は「もちろん公約どおり、2025年を目処に75から50%の減少を目指します」。

モントブール大臣 Photo: AFP

(フランス2TV)

My opinion: 「いずこも同じ秋の夕暮れ」? エロー発言は「75%から50%(!)」と、いらない「50%」がくっついているが、この50のおまけはオーランド大統領も承知のことなのだろうか。昨年もエコロジー党のセシル・デュフロが「原発の電気が一番安い、というのは大嘘。なぜならば、今の電気代にはこれからかかる大きな費用、つまり使えなくなった原発の解体や安全対策費が一切含まれていないからで、原発一基を解体するのに20年から30年かかることを思えば、原発は将来大変な費用を生み出します。その費用はもちろん消費者が払わなければならなくなるでしょう」と言ったことを思い出せば、早いうちに新エネルギーの開発やその他大改革に等しい対策をしっかり立てないと、原発を沢山持っている国から先にバタバタと潰れていくことになるような気がしてならないが、皆さんはどうお考えだろうか。

オーランド政権は、ヨーロッパ経済危機とフランスの経済危機の真っ只中に樹立し、大きなわりを食ってしまっているが、どこまで浮上できるやら。これから新年度が彼にとって初の大きな山場となる。(S.H.)