8月4日に特別機動隊100人を投入する大掛かりな突撃で逮捕された4人は、翌5日、事件に直接関係のないことがわかって釈放された。当局は、彼らの事情聴取で殺された犯人の共犯を突き止めることができたと発表。すぐに解放されたものの、捕まえられた4人の若者の弁護側は、「何も大げさに武装して突撃して連行するほどのことではなく、召喚状で警察に出頭させて証言させることで十分だったはず」と怒りを示している。 同4日の夜から5日の夜にかけて、ほかの3つの町でまた警官へ向けて実弾による発砲事件が発生した。 ブルゴーニュのオーセール市で、警察の車に小銃で発砲する事件が発生。また、パリ近郊のバル・ド・ワーズのビリエ・ル・ベル町で、車を検査していた警察に15人ほどが発砲。もう一箇所はリヨンの近郊、ビルフォンテーヌ町で、警官の自宅に向けて拳銃で発砲。警官の自宅には家族が寝ていたが、三つの発砲事件でいずれもけが人はなかった。 サルコジ演説とそれに引き続くこれ見よがしの内務大臣の指揮による捕り物が、かえって相手の暴力に油を注いだかたちで、即日警察に対する発砲事件があちこちで起き、こんどは自分たちが標的になるのではないかという懸念が警察や機動隊のあいだに広がりつつある。 サルコジ大統領の、ときに非論理的な言動に、一部の国民がたてをついて状況が泥沼化していくのは今に始まったことではない。 政府の刑法修正に絡んだ国籍剥奪に反対する国民が、インターネットで署名運動を始め、多くの反響を集めている。国籍没収に反対の署名数2日で2000人(バカンスで国民の50%が不在のあいだの数字としては大きい)。 一方で、きょうの日刊新聞ル・フィガロの世論調査では、以外に同調者が多く、1. 女性の割礼や重婚(アフリカに多い一夫多妻制)罪に対する刑罰として80%が賛成、2. 警察や機動隊への攻撃に関し70%が国籍剥奪に賛成している。野党社会党書記長はこれについては沈黙状態。のみならず、社会党の中でも50%が賛成しているという。「フランス国籍を簡単に認めて大量の外国人をフランス人にすること自体がおかしいことをむかしから提唱しています」とは、極右フロン・ナショナルのマリー・ルペンの発言だ。国籍没収とともに国籍授与条件も再考されるのか。刑罰枠内での国籍没収案はこの秋、移民大臣から提出されるもようだ。