フランスから―環境とアートのブログ

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Posts tagged "サルコジ大統領"

2012年、大統領選挙の大きな焦点

政治の焦点、「原子力発電」- 2012年大統領選挙に向けて、社会党とヨーロップ・エコロジー・レ・ヴェール(EELV)が、野党連合が勝利したときの原子力発電の将来について、現在フランスにある58の原子炉のうち24を廃炉にすることでようやく合意に達した。EELVが原子力発電を完全に廃止する意向を示したのに対し、社会党候補のフランソワ・オーランドが原子力の抑制に明確な態度を示さなかったことで、両党のあいだに大きな溝ができていた。 ル・モンド紙の別冊特集11月号は、福島原発事故を大きな契機として、2012年大統領選挙が原発政策の行方に大きく左右されることになるだろうとして、原子力エネルギーの行方を追っている。 サルコジ大統領はこの11月25日、ドローム県のトリスカスタン原子力発電所で、エネルギー政策について長い演説をした。「蝋燭の時代に誰が戻れますか?発展することに背を向けた国になれますか?・・・われわれの次の世代により近代的な社会を残すのが私の意志です」と、サルコジ大統領は、いまだに「安い原発」、「雇用を生む原発」、「清潔なエネルギー」を盾に、原発推進政策への姿勢を変えるつもりはない。 EELVヨーロップ・エコロジーのセシル・デュフロは、「原発をやめると雇用がなくなるなんていうのは、愚論です。閉鎖される原発周辺の雇用が減るのは当たり前ですが、新しい自然エネルギー開発のために雇用が格段に増加することが予想されており、その数は現在の原発雇用を上回る計算です」、と雇用減少に大反論。「安い原発」については、「核廃棄物処理代、原発管理代、そして何十年も掛かる原発解体作業などの、膨大な費用はまったく計算に入れておられず、原発が安いというのは大嘘です」と理路整然だ。 福島原発事故で原子力発電の世界的な見直しがなされる中、フランスの2012年の大統領選挙は、サルコジ大統領を代表とするUMP与党の親原発派と、原発全面廃止へむけて国政の流れを変えたい野党連合との対決となることは明らかだ。 ドイツ最後の核廃棄物を運ぶ貨物車に押し寄せる核反対派 - ドイツが出した核廃棄物がフランスのラ・アーグ核廃棄物処理場で処理され、そのうち処理できない究極の廃棄物がドイツに返される。ドイツは2022年までに、全ドイツの原子力発電所を廃炉にする。ドイツ「最後」の廃棄物運送列車と名づけられたこの列車は2011年11月18日、ラ・アーグからドイツの核廃棄物貯蔵所のあるゴルレーベンへ向けて出発したが、現在もグリンピースや核反対派のデモに阻まれ、ゴルレーベンにはまだ程遠いドイツ国境あたりの線路で滞留している。 今回列車運送される核廃棄物は、ドイツが1年半の核処理で出したもので、アレバの工場で301本のガラスの円柱筒に詰め込まれ、その量総計14トン。高濃度のきわめて危険な放射物質といわれる。長さ7m直径3mのワゴン数両にふり分けて収納され、核廃棄物を積んだ列車は通常の電車が走るレールを利用してドイツまで行く。現在ドイツ国内をゆっくりゴルレーベンに向かっているが、ゴルレーベンまで一万人以上の核反対派が線路脇で待ち受けているもよう。 My opinion: 廃棄物や危険物は、それを出した国が責任を持たなければならないことになっている。だからドイツが出した核廃棄物は、処理できなければドイツへ戻ることになっている。ドイツの原子力発電の炉数は19基といわれている。19基の原子炉が1年半に出す処理できない核廃棄物が14トンとすれば、単純計算でフランスの58基は43トン、日本の53基は39トンという処理不可能な高レベルの放射性廃棄物を出す計算である。フランスの1年半分の43トン、日本の39トンは、いったいどこへ格納されているのだろうか。ドイツとフランスの共同TVチャンネルであるアルテが、こうした核廃棄物の貯蔵について大きなルポルタージュをしたが、フランスは、広大なシベリアの土地まで持って行き野外に廃棄物のコンテナをむき出しで並べて放置して知らん顔をしているらしい。それでは日本はいったいどこへ貯蔵をしているのだろうか。誰も不思議に思わないとすれば、それこそ、これほど不思議なことはない。福島原発は1968年に基礎を置いた。日本の原発の歴史は長い。廃棄物の量は原発の歴史とその量に比例して多いはずなのだ。(S.H.)

アクチュアリティ、ユーロ圏はどうなる?

経済: ブラッセル、ユーロ圏救済特別サミット - GDPの150%に上る3500億ユーロもの負債をかかえるギリシャを救済をするために、ニコラ・サルコジ仏大統領は昨日ドイツのアンゲラ・メルケル首相と事前協議をするためベルリン入りをし、きょう17か国のEU代表が集まるブラッセルの欧州特別審議会で仏独共同策を提示した。今日中にEUが救済介入を決定しなければギリシャが倒産する。ギリシャの後ろには同様に経済危機をかかえるポルトガル、スペイン、それに加えてイタリアの低迷が足を引っ張リ、ギリシャが倒産すればユーロ圏崩壊を招くことは必定だ。こうしたユーロ体制の危機に際し、何を犠牲にしてもギリシャを救済するというサルコジ大統領と、自国内の金融体制には一切影響を及ぼさないことを前提に救済策を決定したい意向のメルケル首相との会議は7時間にわたって行われた。きょう13時から現在行われているブラッセルのEU特別審議会は、ギリシャは負債の全額を返済する必要はないというEU統合はじまって以来前代未聞の提言をしてギリシャの破産を食い止めようとしているが、負債の返済を一部回避できるとなればギリシャに貸借している銀行が困窮に陥る可能性がある。ギリシャ国内は、VAT消費税の高騰、ゼネスト、賃金引下げ不払いが相次ぎ混乱は収まらない。救済策として返済見過ごしを導入するのは、事実上暫定策でしかないという見方が大勢だ。 経済: EU緊急特別審議会、ギリシャを救う姿勢強く見せつける - (上記の続き)10時間以上に及ぶ審議のすえ、EUは3500億ユーロの負債をかかえる破産寸前のギリシャにたいし、1580億ユーロの救済金を捻出することを決定した。予想されていた額より多く、うち、3分の2はEU17カ国が負担し、3分の1は銀行が利息を減らしまた負債の一部を帳消しにするなどの処置で負担する方針。ギリシャを救済することで、EU諸国がEU圏の保持に全力を努める姿勢を強く打ち出し、ユーロ圏崩壊を食い止める体勢を世界に誇示したことになる。 破産は食い止められるもののギリシャ国民は悲観的で、「今回の処置はほかの国にしわ寄せが行くだけで、国内生産をあげるよう国が努力しなければ、元の木阿弥だ」。(フランス2TV) 社会党フランソワ・オーランド、メディアの行き過ぎに激怒 - DSK、ドミニク・ストロス=カンのニューヨークの婦女暴行事件が一転二転。DSKがニューヨークで自由になったとたんに、フランスでは2003年にDSKに強姦されそうになったというトリスタンヌ・ボノンという女性がDSKを訴えでた。2003年、DSKは社会党政府の経済大臣で有力者。トリスタンヌ・ボノンは暴行された当時、友人や家族などの周囲におしとどめられて沈黙していたのだという。トリスタンヌ・ボノン事件に関し、検察が事情聴取をすることを決め、社会党の大統領候補で有力視されているフランソワ・オーランドが参考人として召還されることになった。問題は、『ル・フィガロ』日刊紙の一面に、トリスタンヌ・ボノンとフランソワ・オーランドの2人の合成写真が大きく取り上げられており、またしても社会党が汚名を着せられたような印象を与えたことだ。「私は事件にはなんら関係がなく、また第三者以外の何者でもない。いいかげんに、細工(報道の?)を止めないと、法廷に引き出す用意がある」とフランソワ・オーランドは激怒。検察は9月にでも事情聴取をといったが、9月は社会党の大統領候補を決定する大事な時期に入る。「事情聴取をするなら今すぐやってくれ」と答えて、早速昨日召還を受け、「周辺の人たちの一人として知らされた覚えはあるが、自分はまったく事件とはかかわりがなく、これ以上の情報はまったく無い」と強調したという。 社会党書記長も、この日「人を貶めようと裏工作やら小細工が横行しすぎている。政治はもっと大きなビジョンや政策の問題を前面にしてやっていくものではないですか」と、DSK事件を発端として、社会党の人気落しが裏工作され続けていることに業を煮やした発言をした。 エネルギー - EDFフランス電気会社が30億ユーロの予算で建設中の新型炉心を備えるフラマンビル原子力発電所建設(バース・ノルマンディー)がさらに遅れ、2016年を完成めどとすることにした。このために建設費用は二倍に膨れ上がり60億ユーロになるという。2010年を目指して建築中であったが二度の大事故ですでに大幅に遅滞していたもの。福島原発事故なども影響して、原発炉心構造のさらなる安全性が求められており、建築予算は雲をつく勢いで増加。世界中で同種の炉心建設計画が10箇所あるが、うちアブダビやイタリアは建設を中止した。 (フランス2TV、BFMTV)

アクチュアリティ

冷夏 - バカンスに入ったとたん、フランス全土を冷気が包んだ。あちこち雨、アルプスでは標高2600メーターで雹、続いて降雪。アルプス山岳地帯で転車競技を楽しんでいた約200人が、冷気を超えた寒気に襲われ消防隊に救助された。自転車競技参加者はショートパンツに半袖の軽装。大雨のあと気温が急降下して3度まで下がり、雪に見舞われるなどして、寒さで体が硬直し動けなくなったため。 ブルターニュ、太平洋岸はスペイン国境近くまで平年より7度から5度低い気温に、海水浴をする人はほとんどいない。ドイツやイギリスからの旅行者も、悪天のフランスに飽き飽き。海岸近辺の商売は上がったりだ。冷夏は7月下旬まで続くもよう。 マルチーヌ・オーブリィ、文化予算倍増を提言 - 雨のアヴィニョン・フェスティヴァルを訪れた社会党のマルチーヌ・オーブリィは、5年をかけて文化予算を30%から50%増加することを提言した。フランスは「文化の多様性」に立ち返り、文化を活発化しなければならないとし、現政府、ことにサルコジ大統領の文化離れを批判した。 ちなみにフランスの文化予算は減るどころか増える一方だという。2011年の文化予算は、75億ユーロ。うち、3億7500万ユーロは、歴史建造物へ、6億6300万ユーロが舞台芸術に、4億2000万ユーロが(困窮状態の)報道関係へ費やされている。(フランス2TV) My opinion: マルチーヌ・オーブリィのみならず社会党議員たちのなかには、現代芸術へ思いを寄せ、地方レベルで支援増大を実行している議員が大勢いる。昨年私が参加したルーアン・アンプレッショネ展も、今年のメル現代アート・ビエンナーレも、そうしたかれらの予算増大の賜物の展覧会なのである。シラク以前の革新政府時代は、文化予算といえば現代芸術の「創造にたいする支援(Soutien à la création)」が必ず大きな位置を占めていた。時代が変わったサルコジ政権下のきょう、フランス2TVが引用した文化予算の内訳に、そうした創造のための予算が言及されなかったこと自体がすでにおかしい。その上、4億2000万ユーロが報道関係の救済(Aide à la presse en difficulté)というから、文化のなかでもどういう形態のものに多額な予算が利用されているか、推して知るべしである。サルコジ政治で2007年を境に、めっきり文化の話が減少した。そう、多くの人が感じている。少しのあいだにズレてしまった文化の真意を取り戻し、文化予算も内容をうんぬんすべきときにきているのではないか。(S.H.)

論争、エヴァ・ジョリィ対フランソワ・フィヨン

論争沸騰、軍事パレードから二重国籍へ- 7月14日、キャトルズ・ジュイエ。シャンゼリゼ通りで行われる恒例の軍事パレードについて、EELV(ユーロップ・エコロジー・レ・ヴェール)に選出された大統領候補エヴァ・ジョリィの発言が、論争を巻き起こした。この日エヴァ・ジョリィが、「軍事パレードを廃止して、市民のパレードに切りかえてはどうか」と発言したところ、フランソワ・フィヨン首相がこれを受け、「なんとも悲しい発言だ。この’婦人’はフランスの伝統や、古い文化や価値、またフランスの歴史がまるで分かっておられない」と、メディアに向けて正式発表するかたちをとってやり返した。エヴァ・ジョリィはこれに反駁し、「私はフランスで50年も生活してきたれっきとしたフランス人です。私の愛国心に対し疑いを投げかけるような言い方は許せません」。引き続き『Le Point』誌上で、「こうした(首相の)言い過ぎは、ナショナル・アイデンティティをたてに虚勢を張るところからでている。首相は、ああしたことを言ったことで、公ですべき意見討論の意味を貶めたばかりではなく、共和制政体のあり方そのものが退廃へ向かっていることを露にした」と述べた。 EELVの創始者、ダニエル・カン=ベンディット(欧州議員)は、「エヴァは正しい。フィヨンの脱線だ」。ユーロップ・エコロジー書記長セシル・デュフロは、「こうした発言をする首相は恥だ」。また社会党のフランソワ・オーランドは、「(軍事パレードをうんぬんというのはひとつのアイデアとして出ただけ)出てくるアイデアのもろもろを公の場で検討していくのは当たり前のことなのだが、そうした討論の場すら拒否してしまうような政府は言語道断です。フィヨン発言は許せません」。社会党のマルチーヌ・オーブリィはさらに輪をかけて、「フランスで生まれたフランス人も、フランスの外で生まれたフランス人もフランス人として同等の立場にあります。同等の権利を再び外と内とで引き裂くようなフィヨン首相の発言は、大問題です。フロン・ナショナル(極右政党)と同じラインではないですか。今回、心底からショックを受けました」。 軍事パレードの問題を飛び越え、フィヨン発言は革新左派を逆撫でする結果となり、「ナショナル・アイデンティティ」にかんする保守右派政府と革新左派全体の対立を、再び浮上させることとなった。 (フランス2TV、TF1TV、F2blog、Le Point) 〈注記: キャトルズ・ジュイエの軍事パレードについて - 大本はナポレオン一世時代に始まったもので、そののち1880年から毎年国民の日7月14日に行われるようになったパレード。シャンゼリゼ通りで行われるようになったのは第一次世界大戦後の1919年。現在のパレードは約4000人の軍隊(兵学校、海軍、陸軍など)、および消防、警察などで構成されている。キャトルズ・ジュイエの軍事パレードは、ロシアの赤の広場の軍事パレードに次ぐ大きなパレードといわれている。〉 My opinion: エヴァ・ジョリィの立候補と今回の発言、またフィヨン首相の発言にはさまざまな大問題が含まれている。キャトルズ・ジュイエの軍事パレードについていえば、現在軍事パレードが定期的にこれだけの規模で行われている国はロシア、北朝鮮など、ある種の政治色が濃い国ばかりであること。伝統的かつ著名な風習を廃止するという「ひとつの」提案を無下にし、フランス・ノルウエーの二重国籍を持つエヴァ・ジョリィに対し、「このご婦人はフランスの歴史も価値も知らない」といったフィヨン首相の表現には、エヴァ・ジョリィを外国人とみなしてフランスという国の概念の外へ押し出そうという意味合いがありありとしていたことだった。出るべくして出たこの二重国籍を保持する大統領候補の「出自」の問題。このことで、保守現政府が政府樹立当初、省まで設けた「ナショナル・アイデンティティの概念」を思い起こす国粋主義的な保守の根本志向が再浮上し、従来の保革の思想的対立へ立ち返ることになった。 フランスは植民地が多かった。北アフリカ、仏領インドネシア、ポリネシアなど、旧植民地関係でもフランス国籍を持つ有色人種がたくさんいる。フランス自体、イタリア、スペイン、ロシアなどの少数ながら民族移動と居留が歴史的に頻繁に繰り返されており、国民の混血を免れてはいない。また、サルコジ大統領も父親はハンガリー人でブタペスト生まれ、母親はフランスで生まれているが、家系はユダヤ系ギリシャ人。フランス人のアイデンティティを再考して、フランス人として不釣合いあるいは疑わしい人間の国籍を没収する、などという政策をとるなどしている現政府の「シェフ」ですら、フランス国籍取得は一代前のことでしかない。 こうした国で考えることは、自分のアイデンティティもしかることながら、「人間の権利」とは何かということだ。生まれたときから授けられた権利、剥奪される権利、獲得していく権利。いろいろあるが、現在生活をしている現場の国の人間たちと同じ権利を保障する国籍に関していうならば、日本は本来、二重国籍保持を許してはいない。したがって日本国籍を持つ限りは、日本人が外国で大統領候補になる可能性などは皆無である。したがって、フランスに50年いてもエヴァ・ジョリィにはなれない。すでにその50年あるいは1年ですらも、エヴァ・ジョリィと同じ生き方はできない。国の外で見えてくる人間の「権利の対等」。対等の権利を持つ。人一人の運命にとどまらず国の運命まで変えるキー概念のひとつがここにある。(S.H.)

フランス2TV特番「原子力、すべてを変える災害」

France 2 TV企画 COMPLEMENT D’ENQUETE ” Nucléaire – la catastrophe qui change tout” (ビデオ)、フランス2TV番組、《コンプレマン・ダンケート、「原子力、すべてを変える災害」》、長さ1時間55分、2011年4月18日放送。ビデオ掲載(下) 注記: フランス2テレビ企画、《コンプレマン・ダンケート(「調査の補完」の意)》は、社会問題、政治問題、事件などの深奥を調査し公表することを目的に制作されているフランスのテレビ・ルポルタージュで、敏腕ジャーナリストとして知られるBenoit Duquesne(ブノワ・デュケンヌ)が現場の責任者のインタビューや取材映像をまとめ、問題の中心に迫る司会をする。90分番組。カナダのケベック(フランス語圏)でも再放送される。特番「原子力、すべてを変える災害」は1時間55分といつもより長く、フランス国民の関心の高さを繁栄。ちなみに、原発問題に関するこの番組は、現在フランス2TV のビデオの再生回数でトップにランクされている。…

アクチュアリティ、内閣改造

内閣改造、これで4回目 - 2011年2月28日付けで、内閣改造が発表された。外務大臣ミシェル・アリオ=マリーがチュニジアの暴動を軽視し、「プラハの春」をもじって、現在「アラブの春」とまで呼ばれるようになったアラブ諸国の民主化への動きにたいし、国民議会で「チュニジア政府にフランスの軍事援助を提供してチュニジアの暴徒鎮圧に協力をする」という案を提出して、議会のみならず国民の大きなひんしゅくを買って以来、「ミシェル・アリオ=マリー降ろし」が嵐のように始まったのがきっかけ。チュニジアの反乱初期すでに死者が数十名出ていた時期にチュニジアへクリスマス・バカンスに行き、ベン・アリ大統領の側近の飛行機で周遊したり、当時ミシェル・アリオ=マリーの両親がチュニジアの不動産投機をするなどしていたことが矢継ぎ早に明らかにされて、チュニジア旧政府との関係が槍玉に上がった。これに対しミシェル・アリオ=マリーはメディアで反論をし続けたが失言が重なるなどし、辞表を書かざるを得ない状況へ。辞表は「私は何の過失も侵してはいないけれど、状況が許さないようなので」という内容。外務大臣がアラブ諸国の民主化への動きを察知していなかっただけではなく、大臣の行動の裏にあった現政府のアラブ諸国との旧来の外交姿勢自体が問題視されることになった。歯止めがきかなくなった政府は「フランスのイメージが危うくなる」(フィヨン首相)のを防ぐため、内閣改造へ。 ミシェル・アリオ=マリーの後任は、アラン・ジュッペ。また、この内閣改造で内務大臣ブリス・オルトフーが退任、ロムの国外追放の際、内務省通達でロムを差別扱いしたことなどが原因とみられている。 内閣改造はこの一年で、4回目となり、サルコジ大統領の不人気を裏付けるかたちとなった。ちなみに大統領の現支持率は21%から25%。 新内閣構成はつぎのとおり。ウィキペディアフランス。http://fr.wikipedia.org/wiki/Gouvernement_Fran%C3%A7ois_Fillon_(3) 働く女性の割合 - 2011年現在フランスでは、女性の人口のうち働く女性の割合は66%。3歳以下の小さい子供を持つ母親で、働いている女性は78%。この数字は1975年の統計43%にたいし増加傾向を続けている。(フランスTV)

アクチュアリティ、裁判官ストライキ

前代未聞、裁判官のストライキ - 2011年1月22日、18歳のレティシア・ペレがスクーターでアルバイトから帰宅途中失踪。エンジンがかかったままのスクーターと靴が発見され、婦女暴行や暴力事件で常習犯のトニー・メイヨンが翌日重要参考人として警察に保護された。まもなくトニー・メイヨンはレティシアのスクーターと事故を起こしたことを自供。2月1日になって、ばらばらになったレティシアの遺体の一部がサン・ナゼール付近の池で発見された。警察の検証によると発見された頭部には首を絞められた跡があり、殺人の疑いが強い。トニー・メイヨンは保護観察中でありながら尊守事項を守っておらず、危険人物として不良措置を課されるべき状況であったにもかかわらず野放しにされていた。その最中に起きた事件であることが指摘され、これを受けてニコラ・サルコジ大統領が2月3日、「(保護観察中の常習犯がきちんと監督されていないのは)、司法と警察の機能破綻である。職務不履行として、処罰されなければならない」と発言。一気に世論が爆発した。「サルコジ大統領の発言は、低級な人気取り」とヨーロッパ1ニュースが批判。「この殺人事件を司法局の責任などというのはとんでもない筋違い。処罰されるいわれはない」と事件の起きたナント市の裁判所が強硬に抗議した。「司法官や裁判官のポスト削減でわれわれだけではカバーできない部分が急増している。フランス法務省の予算はドイツの半分しかないんですよ」とマルク・トレヴィディック裁判官。「サルコジ大統領は内務大臣の時代から何かあると司法を槍玉に挙げてはスケープゴートに仕立て上げてきた」。サルコジ発言に反旗を翻し、裁判官組合、弁護士組合が審議中の事件を棚上げして大々的なストライキに突入した。明日から警察の二大組合もストライキに参加する。 ちなみに被害者レティシアの家族は、「裁判所と政府の抗争の道具にはなりたくないです」。(フランスTV)

有色人種の政治家誕生、2007年

さてフランスの政治の話である。 フランスがアルジェリアを独立させた1960年代、アルジェリアを含めフランスの旧植民地のアフリカ人たちが大量にフランス国内へ流入してフランスの職業を脅かし始めたため、フランス政府は慌てて政策を立てたというフランスの労働法に関するTVの歴史番組が数年前にあった。おっ、これは大事、と思いながら番組を見たが、録音もせずまたメモもしなかったため、このとき制定された法律の名前も制定年もはっきりしないのが残念至極である。しかしここでは今のフランスを説明するのに重要と思われるため、あえて引用をしたいと思う。 1960年代に制定された労働法に関する法律とは、雇用について、「フランス人でなければならない職業」を分別し明文化したもので、あらゆる職種をこと細かく分類し、全職種の20%以上の職業、殊に、教育、政治、公務員管理職、公社の管理職、医療、司法その他、指導的立場に立つ職業に就く者はすべてフランス人でなければならない、という内容で成立したものだ。職種の「20%」というのだが、当時のフランス社会は公務員社会という形容にふさわしく、国が大多数の株を所有して采配していた大手企業はもとより、私企業は少数派にすぎなかったため、就職口の絶対数から言えば、フランスの大多数の雇用がかかわっていたとみなさなければならないだろう。こうして法的に一線を設けることで、フランスは外国人の侵略からフランス人の雇用を保護した。…

アクチュアリティ

ブラッセルで欧州議会サミット始まる - 欧州議会サミット第一日目から、中心の話題はフランスのロム強制追放。欧州議会議長のジョゼ=マニュエル・バロゾがフランスを名指して、少数民族虐待を即刻止めるように勧告して演説。サルコジ大統領は、これを欧州議会の関与のしすぎとして受け付けず、ロムの追放は止めない方針を明言した。バロゾ議長とサルコジ大統領の衝突が激化。フランスと欧州連合の亀裂深まる。 サルコジ大統領はまた、国外追放はロムを集中的にしているわけではなく、他の民族、たとえばベトナム人、アフリカ人、イラン人など人種別に国外追放に関する数字を発表したりもし、許可を持たずに滞在している外国人の国外追放がフランスの政策として満遍なく行われていることも強調した。 後日談: -9月19日ルーマニアで、フランスの差別にあい強制追放などで苦しい立場に追いやられているロムを支援するデモが行われた。確かにロムはヨーロッパ人で、ヨーロッパの自由交通からいえばフランス滞在は不法滞在にはならない。「ロム国外追放は、かれらの貧困を嫌って行われている」と、デモ隊がフランスに対して批判。 -9月20日、パリ近郊都市ボビニーの警察署での外国人の滞在許可証などの書類申請窓口の様子が、フランスTV で紹介された。フランスの滞在許可書類書き換え申請や獲得に、肌寒い明け方2時から行列。窓口が処理できる人数は一日500人が平均だが、ボビニーではその3倍の1500人が訪れるという。朝8時、窓口が開くころにはすでに500人が行列を作り、すでに限界人数。また、大勢の人間が待っていても昼休みには窓口は全部閉まってしまい、機能しない。住所変更などの簡単な手続きも、同じ行列に並ばなくてはならないという。外国人にとっては書類獲得は困難を極めるすさまじさだ。 「処理をなるべくスムーズにまた内容によって窓口を分けるなども考えているが、今は許容いっぱい」と警察署。無国境教育協会のボランティアたちは、「とんでもない、こんな状況で書類を処理するなんて、外国人の人権を無視しています」と受け入れのひどさを糾弾した。

二つの射殺事件(5)、警察襲撃が続く

8月4日に特別機動隊100人を投入する大掛かりな突撃で逮捕された4人は、翌5日、事件に直接関係のないことがわかって釈放された。当局は、彼らの事情聴取で殺された犯人の共犯を突き止めることができたと発表。すぐに解放されたものの、捕まえられた4人の若者の弁護側は、「何も大げさに武装して突撃して連行するほどのことではなく、召喚状で警察に出頭させて証言させることで十分だったはず」と怒りを示している。 同4日の夜から5日の夜にかけて、ほかの3つの町でまた警官へ向けて実弾による発砲事件が発生した。 ブルゴーニュのオーセール市で、警察の車に小銃で発砲する事件が発生。また、パリ近郊のバル・ド・ワーズのビリエ・ル・ベル町で、車を検査していた警察に15人ほどが発砲。もう一箇所はリヨンの近郊、ビルフォンテーヌ町で、警官の自宅に向けて拳銃で発砲。警官の自宅には家族が寝ていたが、三つの発砲事件でいずれもけが人はなかった。 サルコジ演説とそれに引き続くこれ見よがしの内務大臣の指揮による捕り物が、かえって相手の暴力に油を注いだかたちで、即日警察に対する発砲事件があちこちで起き、こんどは自分たちが標的になるのではないかという懸念が警察や機動隊のあいだに広がりつつある。 サルコジ大統領の、ときに非論理的な言動に、一部の国民がたてをついて状況が泥沼化していくのは今に始まったことではない。 政府の刑法修正に絡んだ国籍剥奪に反対する国民が、インターネットで署名運動を始め、多くの反響を集めている。国籍没収に反対の署名数2日で2000人(バカンスで国民の50%が不在のあいだの数字としては大きい)。 一方で、きょうの日刊新聞ル・フィガロの世論調査では、以外に同調者が多く、1. 女性の割礼や重婚(アフリカに多い一夫多妻制)罪に対する刑罰として80%が賛成、2. 警察や機動隊への攻撃に関し70%が国籍剥奪に賛成している。野党社会党書記長はこれについては沈黙状態。のみならず、社会党の中でも50%が賛成しているという。「フランス国籍を簡単に認めて大量の外国人をフランス人にすること自体がおかしいことをむかしから提唱しています」とは、極右フロン・ナショナルのマリー・ルペンの発言だ。国籍没収とともに国籍授与条件も再考されるのか。刑罰枠内での国籍没収案はこの秋、移民大臣から提出されるもようだ。

二つの射殺事件(4)、サルコジ派の巻き返し

8月最後の閣僚総会 - 8月3日、憲法に反するとして非難轟々のサルコジ演説を受けて、移民大臣のエリック・ベソンが、外国人のフランス国籍の没収に関する修正案を提出するむねを発表した。「憲法を変えなくても、国籍関係は条例で修正することができる」とはエリック・ベソンの言。犯罪に対する刑罰に絡んだ国籍没収に関する法律は、与党の思い通りに改定へ法案化する気配だ。 ある社会党野党議員は、「政府は国の安全にかんするサルコジ政策の失敗を、(外国人の事件にふりむけてることで)カモフラージュしようとしている」と糾弾。 実際、グルノーブルに限らず、街中で車が一度に数百台燃やされるといった破壊事件は、クリスマスから正月にかけて、キャトルズジュイエなどといった際にも頻繁に各地で発生しているのだが、そうしたフランス全土にわたる破壊行為や非行の暴走傾向については、サルコジ政府は何ら根本的な対策を示してはいない。 この閣僚総会を最後に、閣僚たちは3週間の夏休みに入る。すべては秋に議論再開。(S.H.) 8月4日明け方、グルノーブルのカジノを襲った強盗団逮捕 - サルコジ大統領の外国人の犯罪に対するフランス国籍没収演説の引き金を引いたグルノーブルの事件で、カジノを襲って仲間の一人が警察に撃ち殺されたのをうらみに、三日連夜市内の60台の車に放火したり機動隊に発砲するなどの危険な行動に出た強盗の一味が、きょう早朝、100人という大人数の武装した機動隊、地域特別警察、刑事警察の混合部隊をによってビルヌーブの自宅アパートに潜伏していたところを逮捕された。逮捕されたのは4人で、うち2人は未成年。残りは19歳。この特別厳重な武装刑事警官隊による突撃逮捕は、サルコジ大統領の意思を受けた内務省の命令によるもので、政府の態度を国民に見せつけようというもの。朝6時の逮捕はテレビカメラの前で行われている。(フランス2TV発表)

二つの射殺事件(3)、サルコジ大統領暴走

8月2日、サルコジ大統領と右派政府の、国家の安全の名の下にエスカレートした犯罪にたいする刑罰の「提案」内容について、早速、憲法をつかさどる国務院や憲法学者から「違憲」の声が上がった。 1. フランス国籍を有している外国人が犯罪を犯した場合、犯罪者のフランス国籍を剥奪するという刑罰は、「フランス憲法は、フランス国籍を有するものはその出自や宗教を問わず、法の名に置いて平等に処せられる」という基本法を無視するするものとして、違憲である。出自が外国人だということでフランス国籍を剥奪することは、フランス市民を二つのカテゴリーに分類してしまうことになる。(差別の元となる。) - 平等である法の前では、フランス人が同じ犯罪を犯した場合、フランス人の国籍も剥奪する(無国籍にする?)ことになるのか。あるいはサルコジ大統領は、憲法改正を要求することになるのか。 2. 未成年が犯罪を犯した場合、その両親が禁固刑の実刑を受けるというサルコジ派の提案に対し、「フランス憲法は罪を犯した当事者のみがその罪の償いをする」ことを明記しているので、これも「違憲」。 - それでは、やはりサルコジ大統領は憲法改正を要求することになるのか。 我田引水的に刑罰を国籍剥奪や移民問題に結びつけ、憲法を飛び越えて法案化へ先走るサルコジ大統領と右派政府には、野党を含めあちこちから「吐き気がする」、「嫌悪すべき大統領演説」といった意見が投げかけられている。 My opinion: すでにほかで、2007年サルコジ大統領は就任早々ナショナル・アイデンティティーを問題に取り上げ、フランス人であることを改めて証明しない限りは、パスポートや身分証明書の更新(双方とも10年ごとに更新をするのが決まり)をしないという通達を出し、このために多くのフランス人が迷惑をこうむっていることを述べた。 両親も祖父母もフランス人で家族もみなフランス人なのに、ただイギリスで生まれたという事実だけでパスポートの更新ができない、という人のブログがあった。母親が妊娠しているときにイギリスにいて、現地で出産したというだけのことらしい。フランスからのパスポートが出ないので困窮したその人は、一度も住んだことがなくまた税金も払ったことのないイギリスへ思い立ってパスポート申請をしたところ、すぐに郵便で送られてきたという。ヨーロッパでは生まれた土地の権利が発生する。その権利に訴えたというわけだが、フランスで税金を支払っていても、生まれた土地ほどの権利の補償にならない、ということを証明するような話しだ。この事例は一つの事例に過ぎないが、サルコジのナショナル・アイデンティティー条例のせいで、更新がややこしくなり、必要書類の捏造が増えたというもっぱらのうわさだ。 フランスは植民地などの歴史的な因果関係で多くの外国人がフランス国籍を有する。また国籍取得権利と国の独立がかみ合わず、フランスで働いて納税していながら、滞在許可証さえ発行されず、国外にも身分証明がないので出られないという人々もいる。人間の不平等を抱えたまま、それを解消するどころかますます激化するサルコジ政権である。(S.H.)

二つの射殺事件(2)

7月30日金曜、ニコラ・サルコジ大統領がグルノーブルに出向して、国家の安全の名の下に、「フランス国籍を持つ外国人が国を守る警察や機動隊、軍隊などに命にかかわる危害を加えた場合、犯罪者のフランス国籍を剥奪する」という演説をし、即日大きな波紋を及ぼしたことを昨日のアクチュアリティで述べた。大統領演説に応えて、8月1日の今日、オルトフー内務大臣は、フランス国籍剥奪が適応される場合を広げるむね提案をした。内務大臣の提案によれば、現行法に加えて、アフリカに多い女性の割礼や人身売買、重大な非行や犯罪を犯した場合も、フランス国籍剥奪の対象とするという。これをさらにUMPの国会議員が敷衍し、「外国人の未成年が重大な罪を犯した場合、その両親を禁固刑処分にする」法案を提出することを決めた。子供の犯罪による両親の拘置は2年未満という。これらの法案は9月早々に国民議会にかけられるもようだ。未成年の非行が学校で問題化した場合も、この法案が適用され、国籍剥奪の対象となるという。 このニュースをきょうのフランス2のTVアナウンサーは、「突発的な災厄がまた一回り大きくなった」と形容した。国務院が管理する現行法が大統領の意思にそぐわないならば法律を変えてしまおうという現政府の強行な態度のみならず、未成年の犯罪責任を両親にとらせ、犯罪を犯してはいない人間を禁固刑にするなどという法案を発表したからだ。野党社会党書記長のマルチーヌ・オーブリィは、「右派政府、狂気の沙汰!フランスを破滅に追い込むことになる」と糾弾。グランド・バカンスがこの論議で一気に熱湯のように沸騰し始めた。(S.H.)

二つの射殺事件

7月17日と18日にフランスの二つの町で二つの事件が起きた。7月17日はグルノーブルの近郊都市ビルヌーヴで、カジノを襲った数人の若い強盗団が警官隊とぶつかり、27歳の強盗の1人が撃ち殺された。逃走した仲間のグループは翌日夜、仕返しに市内に停められていた車60台に火をかけて燃やし、警察と保安機動隊をめがけて拳銃で発砲した。これら若者グループを制圧すべく、機動隊は150人を投入。追撃は明け方5時まで続き、若者5、6人が検挙された。過去、研究文化の都市といわれてきたグルノーブルであるが、近年その周辺都市が犯罪の巣窟化した現状がこの事件でクローズアップされることになった。 もうひとつの事件は、 ロワール・エ・シェール県(県庁所在地はブロワ)のサン・テニャン市で起きた。7月18日、保安機動隊のバリケードを破ろうとした22歳の若者がその場で機動隊員に射殺された。やはり翌日、殺された若者の仲間が仕返しに車5台に火をつけ、公共の建物の入り口を壊したり並木を切り倒したりするなどの暴動に近い行動に出た。事件後事情徴集を受けた殺された若者の兄は、「機動隊のバリケードを破ろうとなどしなかった。私たちはそばを通りかかっただけなのに、発砲されて弟が犠牲になった」と、機動隊の届出とはまったく食い違う陳述をした。この兄弟はいわゆる「旅行を専門とする人々」と呼ばれる放浪者たちで、強盗をしたわけでもなくまた銃器などもまったく所持していなかった。この事件で、ヨーロッパをキャンピングカーで渡り歩く「旅行を専門とする人々」のあり方が問われ始めることになった。…