フランスから―環境とアートのブログ

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ペルーの旱魃

ペルーの旱魃 - 中米はペルーの山奥。地球温暖化で、25年前は真っ白に雪で覆われていた標高4200mの山々から、今はすっかり雪が消えてしまった。以前は雪解け水でラマの放牧をしていたが、水がなくなって牧草も生えなくなりラマの成育もままならなくなった住民たちの半分が他の土地へ移住して行った。そこで、何とか温度を下げて旱魃を緩和させようと、首都リマのエンジニア、エドワード・ゴールドが山々を白く塗ることを思いついて現地に訪れ、住民の手を借りて実行。「白」いペイントは、費用の掛からない、砂、石灰、水、そして石鹸を少々混ぜ合わせたものだが、こうして、サッカー競技場三つ分の面積の岩肌に塗った結果、なんと10度も温度が下がったという。岩の下には氷水がたまり、小川までできた。「なるがままにして、手をこまねいているだけじゃあどうにもならない。何とかしなくちゃ、と思いついたのがこれでした」とエドワード・ゴールド、そして、好結果に大きな期待を寄せる住民たち。しかし、以前のような牧草豊かな沃地をとり戻すためにはサッカー場約50万個分の山を白く塗らなければならないという。石灰を使った安いペイントにしても、10億ユーロに上る費用をペルー政府が出すかどうかは分からない。 (フランス2TV) My opinion: ペルーの岩山は、植物が育たなくなって岩がますますむき出しになり、太陽の熱にさらされて温度が一層上がっているということだろう。岩肌の色を「白」くすることで温度を下げるというアイデアを思いついて実際に温度を下げることができた驚くべき事実は、目からうろこが落ちるように多くのことを教えてくれる。昔、野外の展覧会で、黒いシートを底に張った透明PVCの大きな容器に水を入れたことがあったが、5月の太陽にさらされた容器の水はあっという間に温度を上げて40度Cちかくになり、小さい泡まで出し始めたので驚いたことがあった。電気も火も使わずに、太陽の温度を吸収して溜めやすい「黒」いシートがあるだけで、水がいとも簡単に風呂の湯程度の温度に上がることを発見したあと、実は登山家たちが山の中で湯浴みをするために黒いシートは欠かせない荷物の一つであることを教えてくれる人間がいた。「環境」と「色」とは人間の知恵を介して実生活に容易に結びつく可能性をひめている。はたして、もっと積極的にこうした知恵を発展させていけないものだろうか。(S.H.)

アクチュアリティ

冷夏 - バカンスに入ったとたん、フランス全土を冷気が包んだ。あちこち雨、アルプスでは標高2600メーターで雹、続いて降雪。アルプス山岳地帯で転車競技を楽しんでいた約200人が、冷気を超えた寒気に襲われ消防隊に救助された。自転車競技参加者はショートパンツに半袖の軽装。大雨のあと気温が急降下して3度まで下がり、雪に見舞われるなどして、寒さで体が硬直し動けなくなったため。 ブルターニュ、太平洋岸はスペイン国境近くまで平年より7度から5度低い気温に、海水浴をする人はほとんどいない。ドイツやイギリスからの旅行者も、悪天のフランスに飽き飽き。海岸近辺の商売は上がったりだ。冷夏は7月下旬まで続くもよう。 マルチーヌ・オーブリィ、文化予算倍増を提言 - 雨のアヴィニョン・フェスティヴァルを訪れた社会党のマルチーヌ・オーブリィは、5年をかけて文化予算を30%から50%増加することを提言した。フランスは「文化の多様性」に立ち返り、文化を活発化しなければならないとし、現政府、ことにサルコジ大統領の文化離れを批判した。 ちなみにフランスの文化予算は減るどころか増える一方だという。2011年の文化予算は、75億ユーロ。うち、3億7500万ユーロは、歴史建造物へ、6億6300万ユーロが舞台芸術に、4億2000万ユーロが(困窮状態の)報道関係へ費やされている。(フランス2TV) My opinion: マルチーヌ・オーブリィのみならず社会党議員たちのなかには、現代芸術へ思いを寄せ、地方レベルで支援増大を実行している議員が大勢いる。昨年私が参加したルーアン・アンプレッショネ展も、今年のメル現代アート・ビエンナーレも、そうしたかれらの予算増大の賜物の展覧会なのである。シラク以前の革新政府時代は、文化予算といえば現代芸術の「創造にたいする支援(Soutien à la création)」が必ず大きな位置を占めていた。時代が変わったサルコジ政権下のきょう、フランス2TVが引用した文化予算の内訳に、そうした創造のための予算が言及されなかったこと自体がすでにおかしい。その上、4億2000万ユーロが報道関係の救済(Aide à la presse en difficulté)というから、文化のなかでもどういう形態のものに多額な予算が利用されているか、推して知るべしである。サルコジ政治で2007年を境に、めっきり文化の話が減少した。そう、多くの人が感じている。少しのあいだにズレてしまった文化の真意を取り戻し、文化予算も内容をうんぬんすべきときにきているのではないか。(S.H.)

アクチュアリティ、環境…

バクテリアによる経済的被害甚大 - ドイツのハンブルグを中心に広まったバクテリアによる食中毒で死者は25人となった。ヨーロッパ諸国12カ国に広がったばかりではなく、アメリカでもやはりドイツに旅行をした人が一人中毒症状をだしている。バクテリア感染源として濡れ衣を着せられた生野菜、特にキュウリの生産者の被害は甚大で、スペイン、フランスなどでは収穫したキュウリを毎日捨てる作業が行われ、倒産寸前の農家も出始めている。EUは被害を受けている生産者に対し、1億5千万ユーロの援助金捻出を決定したが、実際農家は毎週2億ユーロ相当の損失をだしており、援助は焼け石に水状態だ。一方、バクテリアのほうはいまだに感染源がつかめず、各国の研究所は検査の範囲を広げ原因究明を急いでいる。(フランス2TV、フランスTF1TV、) 旱魃と異常気象 -フランスの特に北部では好天気続きで暑さが夏並み。旱魃により、現在全国62県が節水体制を取っている。一方で先週および今週はじめ、南仏やヴァル・ディゼールで大嵐や大粒の雹が降り農作物に大きな被害を与えた。りんごやナシが全滅の農家も。また先週は、アルプスやピレネー山脈の一部で雪が降り、30cmから50cmの積雪を記録した。300頭の羊が凍え死ぬなどしている。 福島原発事故、マグマ状になった核燃料が流出 - すでに津波の直後に福島第一原子力発電所の一号機から3号機までの炉心3基で、核燃料がメルトダウンしてマグマ状になり、壊れた格納容器から一部外へ出ていた可能性のあることをようやくTEPCOが発表した。原発事故から3ヶ月たっても放射能の流出を止められずにいるTEPCOは、国際原子力機関(International Atomic Energy Agency:IAEA)への正確な報告を迫られ、これまでの不透明で煮え切らない部分を正してようやく内容を明らかにする姿勢を示したことになる。(フランスTF1TV) My opinion: 4月下旬あたり、イギリスのウィリアム王子とケイト・ミドルトンの結婚式直前あたりから、福島原発事故のニュースがほとんど表面から消え、各国際放送のビデオではなくブログなどで言及する程度だったが、再びこの二日ばかり、フランスのTF1が取り上げている。状況が最悪の状況であることがはっきりしたからだろう。核燃料がマグマ状になって壊れた格納容器から外へ出る、という最悪のシナリオは、フランスではすでに3月中旬に原発が爆発した時点で何度もTVで言及していたが、日本側は「建屋の水素爆発のみ」という表現で、核燃料には一切触れていなかった。