更新2015年2月23日:

2月18日、テレビ朝日やフジテレビなどが総理官邸における黒田日銀総裁の「直訴」について取材をした。2月12日、総理官邸において経済財政諮問会議が開かれ、この際、黒田日銀総裁が約5分にわたり、日本経済への強い危機感を示したという。各社報道によれば、日銀総裁は、日本がOECD加盟諸国の中でも「群を抜いて負債が多い」こと、また昨年12月にアメリカのムーディズ格付け会社が、日本国債の格付けをAa3からA1に格を落とし、隣国の韓国や中国より下にランク付けをしたことで、日本国債の信用度が薄れたこと、また信用の下落によって国債が暴落する危機が高まり、国債を大量に抱え込んでいる日本の銀行が危険な状態に陥る可能性が高まることを指摘し、首相へ経済健全化へ向けて本腰を入れるように申し出たという。

これに対し安倍総理はランク付け会社と交渉を、と黒田総裁に促したが、黒田総裁はすでに格付け会社と意見交換をした結果、格付けは変更できないものと答弁した。すでにヨーロッパは格付けにしたがって経済政策を見直す方向にあるという。

すでにこのブログでもヨーロッパの経済恐慌が起きる時に、こうしたアメリカの格付け会社の格付けが国の国債の信用度を世界レベルで測るものとして紹介してきた。ギリシャの国債格付けの下落が信用度をさらに引き下げて暴落を招き、ひいてはギリシャ経済恐慌へなだれ込んでいったことは、記憶に新しい。各社報道では、ギリシャの例も挙げて、銀行の危機が迫りギリシャと同じような経済恐慌の危機と日本も隣りあわせになっているのではないか、という危惧を覗かせている。ギリシャはヨーロッパ連合がこぞって何とか救おうと努力をしてきた。が、日本は世界の経済連携の中で、日本以外のどの国が経済救済をしてくれるというのだろうか?

2月20日、今日再び日本の報道各社から、先日の黒田総裁の「直訴」部分が当日の議事録から削除されていたという報道が出た。緩和金融を推進して安倍政権と二人三脚をしてきた、金融のプロかつ諸外国の情勢の中で日本を考え直した黒田総裁の切迫した提言が削除されていたという異常事態には、世界に立脚して現実を直視しようとしない政府の態度が露骨に感じられるのである。

TBS黒田総裁の提言、記録せず・・・「この発言は政府の内部で市場に影響を与える可能性があるという判断から、議事要旨には掲載されませんでした」 http://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye2425748.html 

いずれにしても、議事録のような事実を書き留める文書に、その時々の一過性の強い判断などで故意に改竄や消去は許されるべきではない。

昨年のムーディズの格下げ通知に対し、菅官房長官が「単なる私企業のランク付けには日本政府は関与しない」と無視する態度をとったことが思い出されるが、問題はことの重大性だ。黒田総裁が言及した日本の「負債がOECD諸国の中でも群を抜いて多い」ことについて、OECDのデータにアクセスをしてみることにした。

さて、下はOECDのサイトで見る「政府負債」だ。政府負債を比較する棒グラフを抜き出してみた。

OECDサイトはこちら・・・ http://data.oecd.org/gga/general-government-debt.htm

OECD  政府負債

このグラフにはなぜか日本が入っていない。負債の比較に日本がどの位置にあるのかまったく分からないので、数字の比較を試みる。負債が最高のギリシャの数字を見ると「負債、GDPの164%」で、国民生産力の164%が国の負債であることがわかる。そこで「日本」を開いて、日本の各分野の数字が書かれているページを見ると、下のような図がでてきた。

OECD 日本

サイトはこちら・・・ http://data.oecd.org/japan.htm

Debtとかかれたところには、「政府負債、GDPの228%」。つまり国の負債は、国民生産分の二倍以上という膨大な数字で、ギリシャの負債どころではなく、ほかの国と比較する棒グラフの中には入れられないほどだ。黒田総裁が「OECD諸国の中で群を抜いて」と表現した日本の負債は、棒グラフに書き込めないほどの抜き方だったということだ。

下のグラフは、上記のグラフに日本の負債を赤で書き込んだもの。OECDグラフは2012年のもので少々古い。日本は過去最高の政府負債額を更新しており、これより大きくなっているものと考えられる。また青で書き込んだドイツは2014年、政府負債をゼロにし、周辺諸国から喝采を浴びるほどの経済の健全化を果たした。

日本の負債

 

ついでに、先般から話題になっている国民年金の大幅流用。政府が株価を押し上げるべく資金注入することすら異常なことなのに、資金源として国民が積み立ててきた年金を流用していることを改めてこの経済状況の極限で考え直さなければならない。将来、国債の暴落がおき、株の暴落がおき、流用した年金がすべて霧消したならば、いったい誰が責任を取って穴埋めをするのか国民は一切知らされていない。官制という曖昧な組織の行う政策だ。国が最悪の結果がでるときの防波堤となる策を作っていないとすれば、日本はギリシャ以上の経済破綻に陥れられるのではないだろうか。銀行が閉鎖されて自分の預金も引き出せず、年金も支給されず、アテネで国会に向かって「どろぼう!」と叫んでいた怒りの市民の姿がダブってくるのである。

 

さて下は、OECD諸国の年金比較図。日本は赤い線で、日本の老齢年金取得額は最低の部類に入っている。黒はOECDの平均値。首相の言う最先端を担う日本経済、その経済の過去を支えてきた人たちの老後が周辺諸国のうちでも最低の貧困生活であることを、痛烈に自覚するグラフである。

OECD 老齢年金

OECDサイト参照  http://data.oecd.org/pension/net-pension-replacement-rates.htm

(S.H.)

拙ブログ関連記事「日本のGDP、消えた1兆ドル」 http://shigeko-hirakawa.org/blog/?p=9168

FNN 2015年2月18日

 

FNN 2015年2月18日

・20150220 報道するラジオ「株高で日本経済どう見る そして “残業代ゼロ”法案 アメリカの実態」


[ビデオコメント]

■2015年2月20日【金】 株高で日本経済どう見る そして 「残業代ゼロ」法案 アメリカの実態

15年ぶりの高値の株価。きょうの日経平均株価は18300円を超えました。
先日発表のGDPの数字もプラスになりました。
日本経済をどう見たらいいのでしょうか?
今年こそ、給料は上がるのでしょうか?
経済ジャーナリストの町田徹さんと考えていきます。
14:23
さらに、お給料と言えば、大きな動きがあります。
「ホワイトカラー・エグゼンプション制」、
今回名前を変えて「高度プロフェッショナル制度」として残業代ゼロ法案が
この国会で提出され、政権は来年4月実施を目指しています。
政権、財界はアメリカの「ホワイトカラー・エグゼンプション制」を参考にするべきと主­張してきましたが、
そのアメリカでどのような働き方になっているかは、知らさせていません。
そこで、アメリカの「ホワイトカラー・エグゼンプション制」を調査してきた
弁護士の中村和雄さんがスタジオに来てくれます。

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