今日のPHOTO
Photography by Shigeko Hirakawa

凱旋門 Photo: S.H.

2012年12月7日金曜日。

衆議院選挙の投票のために大使館へ出向き、その帰りにシャンゼリゼを通ったときに撮った写真だ。朝方から昼間にかけて雪が積もり、大風が吹いて夕焼けのころに青空が出たときの凱旋門。シャンゼリゼの周辺はすべてピンクに染まっている。

国民の80%が反原発を表明し、福島第一原発事故で国土の10%もがチェルノブイリの立ち入り禁止区域ほどの放射能で汚染されている日本の大事な時代の端境の選挙は、いまのところ自民党が過半数を超える見込みだという。普通に考えてもそんなバカな話はない。

長年にわたって日本をだめにしてきた自民党政権がこんど主権を掌握すると大変だ。憲法改正をもくろむ彼らは、「命」にかかわる基本的人権をおざなりにし、「国」という抽象を優先して国防の名の下の戦争をしたがっている。戦争には金が要る。増税や福祉のカットはもとより、今までのように原発推進、まとまった金の儲かる公団事業を推し進めるだろうから、貧富の差が今以上に劇的に増大する。有り余った核燃料で核兵器を山ほど作り出し、軍事景気をあてにする軍事産業国になる。この40年近く原発を推進してきたのは自民党だし、自由発想や自発性を養う教育や文化を切り捨て、国民の頭脳を洗脳してきたのも自民党だし。民主党にしても、去年の3.11からこっちの情報の嘘、報道統制、国や政治の嘘、基本的人権の無視、等々、嘘の連続にはだいぶ疲れ果てた。

12月7日は、フランスに来て30年ぶり、初の投票。日本大使館は条例改正でようやく2000年に初めて大使館に投票箱を置いた。それから投票する機会を得たのが今年の衆議院選挙、といういきさつがあるからだ。

日本では今年、衆議院選挙の一票の格差が大きすぎ、弁護士協会が違憲を申し立てていたが却下されてそのまま選挙が行われることになったそうだ。フランスは、いや、フランスばかりではなく外国にいる日本人たちは、格差どころではない。長いあいだ投票すらさせてもらえなかった。外国で暮らすと、日本からの権利も剥奪されるなら、生活する現地での権利獲得も、現地の人たちのように思うようにはならない。フランスに30年いても(フランス人にならない限り)、フランスの選挙権は無い。住む、ということとDNAと国籍と。権利はそれぞれ特殊な権利があり、その違いは大きな意味を持つ。つまり、権利をもつか持たないかで阻まれるものが沢山あるのである。だからこそ、上のほうから世界を見渡せる「国」や「政治」は、国の個々人の均等な権利の獲得にもっと親身にならなければならない。(S.H.)

雪のあとの夕焼け、シャンゼリゼ Photo:S.H.