新しい研究発表によると、湖や川に生息する大型の生物がこの40年で劇的に減少しているという。他の陸上あるいは海洋の脊椎動物に比べ2倍の速さ、という危機的状況。
川と湖は地球の表面のわずか1%を占めるのみだが、地球上で最もダイナミックかつ多様な生態系の領域だ。知られている脊椎動物種のおよそ3分の1、魚類の半分が淡水を必要とし、世界の多様な生物の多くが淡水に生息しているのである。

『Global Change Biology』誌が明らかにしたところによると、過去40年間で、この数が劇的に減少した。地球上で淡水に生きる大型生物種の数が、80%以上減少したという。理由は、乱獲と生息域の激減によるものという。la revue Global Change Biology.

 

世界全体で88%の減少

淡水イルカ、ビーバー、ワニ、カメ、チョウザメなどを含む淡水に生息するいわゆる大型動物種といわれる体重30kg以上の生物136種のデータをまとめた結果がこの数字である。
報告では、1970年から2012年までの一連のデータに、ヨーロッパと米国に存在する44種の過去および現在までの地理的分布に関する情報を追加したという。それまでの研究では淡水種の83%の減少が確認されていたが、この新しい追加分の分析で、淡水大型動物の個体数は世界中で88%減少したという、より深刻な数値が出た。しかも地域格差があり、酷いところでは、パキスタンからインドネシアを経由して中国南部に広がるエコゾーンであるインドマレーで、99%。ヨーロッパ、北アフリカ、およびその他のアジアで、97%の減少が見られた。
同様に、種によっても差があり、チョウザメ、サケ科、またはナマズなどの大型魚種は94%の減少、そして、爬虫類は72%の減少を観測したという

人間の開発で激減するエコシステム

科学者らは、この劇的な減少の原因に大きな二つの事象を掲げている。一つは、乱獲(大型種はしばしば肉や皮、卵のために珍重される)、もう一つは生息地の喪失で、繁殖地や餌場をダムなどで塞がれたりなどして動物にとっての自然環境が破壊されることによるものだ。

「世界最大の河川はすでに大部分が堰き止められるなどしており、新たに3,700もの巨大ダム建設が計画あるいは現在建設中という状況にある。これにより、河川の寸断がさらに酷くなる」と、ライプニッツ淡水生態学者で内水面漁業研究所(IGB)のエコロジストである筆頭著者が言う。「これらのダムのうち800を超えるダムが、アマゾン、コンゴ、メコン、ガンジス川の流域を含む多様な淡水大型生物種の生息地に位置しており、東南アジアのメコン川は生物減少の代表的な例である。この川には、地球上の他のどの川よりも多くの種類の魚が生息しているのです。」

イラワジのイルカ(Le dauphin de l'Irrawaddy (Orcaella brevirostris) est considéré en danger critique d'extinction dans le fleuve Mékong. - Stefan Brending/CC-BY-SA-3.0

 

巨大なメコン川ナマズ(Pangasianodon gigas)、シャムコイ(Catlocarpio siamensis)、ケート(Himantura polylepis)の3種が絶滅危惧種と見なされており、イラワジイルカ(Orcaella brevirostris)も危機に瀕している。

この減少は、種の地理的分布にも反映されている。調査によると、ヨーロッパで調査された主要種の42%が過去の分布範囲の40%を失った。最も影響を受けたのは、ヨーロッパのチョウザメで、40年前の分布に比べると大陸のほとんどの川から姿を消して地理的分布の99%を失った。

少なすぎる保護対策

「結果は非常に憂慮すべきもので、淡水生物の多様性の保護に携わる科学者の懸念を裏付けるものだ」と研究の共著者(SonjaJähnig)がコメントした。このIGBの専門家が言うように、これらの種は、陸生または海洋の大型動物相よりもはるかに少ない研究と関心の対象であるため、無作為あるいは適切ではない保護活動しか行われていない」と警鐘を鳴らす。

しかし、支払われる努力が顕然している例もある。アメリカでは、保護対策によりグリーンチョウザメ(Acipenser medirostris)やアメリカビーバー(Castor canadensis)などの13種の生物の生息数が安定、または増加傾向を見せた。 アジアでは、過去20年間初めて、メコン川流域のイラワジのイルカの数が増加した。

「研究結果は、これらの種の将来に向けた警告です」と、研究に参加したネバダ大学研究者ホーガン氏が主張する。 「大半が絶滅の危機に瀕しており、それらのほとんどすべてが私たちの助けを必要としています。今現在私たちがこの事実を理解し、手遅れにならないうちに保護を急がなければならない。」

2019年8月のGEOの記事から内容翻訳:https://www.geo.fr/environnement/en-40-ans-les-grandes-especes-deau-douce-ont-decline-de-88-dans-le-monde-196970?fbclid=IwAR1aJCuruIa_q9jzrf36EjfQiv3r3aTVLqIORobope5z9qW5z3TNmYzUdhU