13チャンネル、ピュブリック・セナ、原子力政策の終わりを明らかに

原子力ドキュメンタリー『原子力、神話の終焉– Nucléaire, la fin d´un mythe』が、9月22日と29日に政治専門のテレビ局ピュブリック・セナで全国放送された。やがてフランスでは、寿命40年を迎える原子炉が34基に上る。原発が延命されるにせよ廃炉にされるにせよ、これからかかる膨大な費用と崩壊していく「安全」を前に、国やフランス電気会社EDFの足踏みがいかに危険を助長するか、54分のドキュメンタリーが浮き彫りにする。

Public sénat 13チャンネルTV*、放送2018年9月22、29日
Replay : https://www.publicsenat.fr/emission/documentaires/nucleaire-la-fin-d-un-mythe-132557
*ピュブリック・セナ/ Public sénat は、2000年に設立した全国TVチャンネル13、国会中継、政治討論、時事ニュースが中軸。https://fr.wikipedia.org/wiki/Public_Sénat

ドキュメンタリーのシノプシス

フランスは1946年から原子力開発を始め、保守も共産党も揃って原発推進した国一丸の政策を背景に、原発実験を行って核抑止力を見せつけ、1973年の世界的オイルショックを契機に他の国に頼らないエネルギーの国内供給を主眼に、原子力の平和利用として原子力発電所の造成に拍車をかけた。
政治家たちの盲目的な原発推進にたいし1975年、エンジニア400人が反対声明を出した。「ちゃんと考えないで推進してしまうと、危険な結果を招く恐れがある」。運動は弾圧された。物理学者「国、県、電気会社、憲兵隊(反対弾圧)の力が強かった。」

15年で原発19、原子炉58基を建設。エンジニア「これは、フランスの国家規模には多すぎ。原発の拡大のしすぎ。」しかし一方で、EDFの原子力エネルギーの宣伝が凄すぎ、暖房まで電気にしてしまったため、冬季電気が足りなくなり、ドイツの火力発電所から電気を買うという、原発が多すぎるのに電気を供給できないパラドックスに陥っていた。

・隠れた危険

原発の立地に欠陥。

地震の地域にあるフェッセンハイム、ボルドーの海の近くにあるブライエ原発。ブライエは1999年の大嵐の時に洪水で一時電源喪失をした。にもかかわらず検査は2011年(F1事故)まで持ち越されたという経緯がある。

リヨン近くのローヌ川沿岸に建てられたビュジェ原発。その西の川上90kmに建設50年の劣化が懸念される高さ130mという巨大ダム(水力発電用に造られた)がある。壁にかかる水圧は非常に高く、水量は6億立方メートル。1960年代、ダムの決壊で数百人が死んだ歴史もある。エンジニア「壁が動いている節がある。下の方に浸水が」。水を湛える壁の下から浸水があるということは、水が壁を押し上げ、浮いているということだ。巨大ダム決壊のシミュレーションによると、水は一気に壁を破って高さ12mの水が50村を襲うという。「ビュジェ原発は?」 EDFビュジェ所長「ダム決壊を予想して、防波堤を作ってあるから水は入らない」。所長の言葉に反し取材班は、計算時のEDFの数量の設定に間違いを発見。原発は水の浸入を防げず、電源喪失する可能性が高い。ビュジェの下流には他に3つの原発、サンタバン、クラウス、トリカスタンがあるが、これらの原発も危ない。

・寿命40年で停止

すでに40年以上を経過したフェッセンハイム原発は安全強化(「新品同様」にするのに9000億円という試算も:Reporterre電子版)をして10年から20年延長を検討しているが、安全基準を満たすのに多くの資金が必要となる。

・欠陥部品と改ざん

心配は、原発の老化や劣化だけではない。欠陥部品が大量に含まれているのだ。
圧力容器や蒸気交換機などの原発の重要な部品を鋳造してきたクルゾー製鉄会社が長年にわたり欠陥製品配給をし、それを隠すために文書を改ざんしたことが判明した。

さかのぼれば、1981年クルゾー製鉄会社が作った圧力容器から蒸気発生器につながるパイプ合金が規格に即していないことが判明したおり、EDFは「基準が改定されたから大丈夫」と嘘をついて使用許可を出させていたことがわかった。原子力安全委員会ASNは2005年、クルゾー製鉄会社の製品が規格に適合していないことを、EDFとアレヴァに文書で忠告したが、それにもかかわらず、EDFとアレヴァはクルゾー社に発注をし続け、2007年フラマンビルの新しい原発EPRの原子炉の底と蓋を発注。原子炉に設置した。後の検査で、クルゾーの圧力容器の底と蓋から規格をはるかに超える炭素を検出。ASNは「炭素が多すぎ、突然の破損もありうる」と判断した。さらに悪いことには、2016年、この欠陥を隠蔽するために書類を改ざんしていたことが明るみに出たのだ。

ASNは2017年、クルゾー製鉄所の作った圧力容器などの重要部品を使う原発23基を停止し、大掛かりな検査に入った。その結果、1063の部品で異常、233の部品が規格違反であることが判明した。

欠陥部品、圧力容器の底

・破産

原子炉の溶接部分も150ヶ所の欠陥が見つかり、やり直しに100万ユーロが注入される。ラ・アーグ再処理工場の老化もひどい。すべての経費はどこから出るのか?
フラマンビルの第三世代原発EPRは、2007年着工してまだ終わらない。物理学者「建設の複雑さと見通しの甘さが原因。当初の見積もりは35億ユーロ、60億ユーロになって、今や110億ユーロかかると言っている。建設と運転維持費とで電気代は3倍から4倍の値段に。高すぎて誰も買わない。」

EDFが建設中のイギリスのEPR2基は230億ユーロにも上る。
ルパージュ元環境大臣「(EPRは)消えゆくモデル。90年代、アレヴァは外国に投資をしすぎて資金を失い、20年間、原発のメンテナンスを怠った」。2011年3月のF1事故以後、フランスは安全基準を引き上げ、原発設備の充当を義務付けた。名前は「大掃除」、「大掃除」には40億ユーロが見込まれている。

40年を過ぎた原発の延命のためにかかる費用を、EDFは480億ユーロとしたが、財務省はこの2倍はかかると見積もった。グリンピース「いや、もっとかかるはず」。

こうした状況にもかかわらず今も昔同様に原子力一点張りのEDF社長は、「せっかく(EPRで)技術更新しているから原発は続けないといけない。自転車をこぐのと同じで、こぎ続けなければならない」。

原発は手を入れメンテナンスをするだけでも膨大な資金が必要だが、フランス電気 EDFの負債は、570億ユーロ(7兆4100億円)。負債で傾いていたアレヴァは、国から50億ユーロの出資を受けて会社を立て直した。

・締めくくり

再生エネルギーで出遅れ。競争ですでにドイツに負けた。フランスは古くなって疲弊した原子力を抱え、経済的、技術的、商業的にも窮地にある。心地の良い40年を与えてくれた原子力は、計算のできないようなカタストロフを起こすかもしれない。もう誰も、事故が起きないとは思っていないのだ。

インタビュー:

・Dominique Minière, Directeur du parc nucléaire EDF フランス電気会社社長
・Bernard Laponche, physicien 物理学者、原発建設のエンジニア
・Greenpeace, Yanick Rousselet グリンピース
・Pierre-Franck Chevet, Président de l’autorité de sûreté nucléaire 原子力安全委員会代表
・Mycle Schneider, Expert indépendant フリーランス原子力専門家
・Yves Marignac, Expert, Directeur de WISE WISEディレクター
・Corinne Lepage, ancienne ministre de l’écologie 元環境大臣

https://www.liberation.fr/france/2018/09/22/le-nucleaire-francais-demystifie-du-plan-messmer-a-l-epr_1679824

My opinion: 夢のエネルギーが一転して悪夢になることは20年も30年も前から分かっていたはず。EDF社長の「自転車をこぎ続ける」とはまさに自転車操業。