我々は環境政策の「危険な後退の時代」に入った

パリ協定に加え、マクロン政権は環境アクテイヴィストのニコラ・ユロを環境大臣にし、政府もろとも地球保護へ邁進するはずではなかったか?元環境大臣のコリーヌ・ルパージュ(Corinne Lepage)は、「2017年にマクロンを支援するよう他へ呼びかけたのは間違っていた。政府の環境政策は私たちを、現実の選択肢とは全く逆方向の危険な後退の時代へと導いている」と警告する。

このところの政府決議は、環境問題について迷走し続け国民の懸念を誘発。マクロン公約の除草剤グリホサート禁止法案は5月28日、議会の大多数の議員が欠席で投票結果が無効になってふりだしへ戻り、むこう3年据え置きとなった。また今回仏議会は、石油会社TOTALのバイオリファイナリー建設を認可してしまった。バイオリファイナリーといえばバイオマスやバイオ燃料を作る健全な工場というイメージがあるかもしれないが、大会社TOTALの工場建設の裏には大きな環境破壊とフランスの農家への経済打撃という二つの裏が隠されている。

パーム油、ニコラ・ユロ環境大臣は約束を忘れたのか?

フランス政府はTOTAL社に、年間30万トンのパーム油を利用開発するバイオリファイナリーの開設を認可した。

すでにフランスはパーム油採取のためにマレーシアやインドネシアで大規模な森林破壊が行われ、動物たちの生息地を奪う過酷な風景をさんざん見せられてきた。ヨーロッパで主に燃料用に使用される油ヤシを集約的に栽培することにより森林の膨大な減少と動物の消滅を招いているのである。そうした状況をニコラ・ユロは必ず終わらせなければならないと表明していた。にもかかわらず、今回政府は、TOTALにマルセイユ近郊のラ・メードにバイオリファイナリーの建設を許可してしまったのである。

「年間処理される30万トンという量のパーム油の栽培には、マルセイユ市の6倍の大きさの土地が必要」と地球保護協会の会長アンジェラン氏はいう。しかし、TOTALはパーム油の規制基準を欧州の一番厳格な基準に合わせるとしたためユロ環境大臣が折れ認可することになったという。

最悪は、環境への権利の侵害

「雄弁の裏でマクロン政権は、原発については公約の脱原発へ向けてのロードマップを放棄し、エネルギー問題を据え置き、グリホサート禁止を3年据え置きするなど、先の環境大臣セゴレーヌ・ロワィヤルの勇断にはよほど及ばない」とコリーヌ・ルパージュ。

「それに加えて、新住宅法(loi Élan)を打ち立てこれまでの沿岸地域環境保護法を危機に陥れ(フランスの沿岸環境を都市化で破壊する恐れ)ているが、現実にはこれとは反対に、毎年の激しい海水浸食で変化する沿岸地域の保護を強化するべきところだ。食の安全と労働環境の安全国立事務局(Anses)が認識した電磁波の影響による各種の病気や養蜂の問題と法規など、人間の健康と生物多様性の保護を軽視してしまっている。しかも許可されてラ・メードに作られるTOTALの工場はマレーシアから輸入する膨大なパーム油を精製するが、工場が出す廃棄物や地下貯蔵庫などの環境へのインパクトはどうなるか、問題は言語に尽きない。

最悪なのは、環境保護の法規自体が、法律として十分に有効なものではなく、大半がオプションであったりし義務になってはいないことだ。実験を口実に、簡単に基準をオーバーしても構わないようになっている。

そうして、長期に有効な厳格な禁止法規として憲法に残らなければならないものが、憲法改正の名において、ただの条件要項としてお飾りにされてしまい、他の市民権に取って代わられることで、環境に関する民主主義が埋没し消滅していっている。

大統領の任期は5年。マクロン政権は今後の4年をギアチェンジし方向転換に使うべき」。

 

農業経営者ら、TOTAL社のバイオ燃料工場設置に反対し給油所を占拠

Par L’Obs 08 juin 2018

国内の農産物に課す基準を輸入農作物には免除されるという政府の矛盾した政策に反対し、団体FNSEAを主体とする農業経営者らが怒り。

ラ・メードに作られるTOTAL社のバイオリファイナリーがバイオ燃料製造のためにこの夏から稼働するが、使用するパーム油の50%を輸入することに関し、バイオ燃料用の菜種栽培をしているフランス農家がこれに反対している。TOTAL社は今後、フランス国内のこうした菜種農家や関連企業と経済競争の相手となるからだ。

欧州規約及び二国間交渉で輸入パーム油とフランス農家の菜種の間には法的基準が新しく設けられることになるが、TOTALとフランス農家の経済競争のなかで政府の対処の曖昧さに不安が募っている。

バリケード、13箇所で

先週一週間にわたり、ブロックされた箇所は以下の通り。

ジェヌヴィリエ(オードセーヌ)、グランピュイ(セーヌ・エ・マルヌ)、ヴァトリィ(ロワールアトランティック)、ゴンフルヴィル、ダンケルク(北)、コワニエール(イヴリーヌ)、ストラスブール、クルノン(ピュイドドーム)、フィジン(ローヌ)、ラ・メード(ブーシュ・デュ・ローヌ)、トゥールーズの各地で農業経営者がバリケードを張る。

フランスには製油所7箇所、200(うち90は大型)の貯蔵所がある。イル・ド・フランスでは、エソンヌ県のグリニィなど重要な給油所をブロック。

一方で、AFPが入手した首相に宛てた書簡のコピーによると、TOTAL社フランスのプイアネ社長は、アヴリル・グループ(フランスの食品及び飼料に関する農産業企業グループ/ Avril)に、TOTALが損をすることになっても(フランスの)菜種油をもとにしたバイオ燃料60万トンを市場価格で購入し、ラ・メードには5万トンをサプライし続けるとしているという。(菜種油で作るバイオ燃料はパーム油より高いため買手がつかなくなる可能性が高い。TOTAL側が緩和策提示か。)

パーム油生産と森林破壊

Palm oil, the ubiquitous ingredient in scores of food and cosmetics products, is responsible for the destruction of rainforests home to orangutans, tigers, and other endangered wildlife.

 

・参考リンク:

https://reporterre.net/Avec-Macron-et-Hulot-nous-sommes-entres-dans-une-ere-de-regression-de-la 

http://www.europe1.fr/societe/lepage-nous-sommes-dans-une-ere-de-regression-ecologique-3668567

https://www.francetvinfo.fr/economie/automobile/essence/huile-de-palme-nicolas-hulot-a-t-il-oublie-sa-promesse_2797055.html

https://www.total.com/fr/expertise-energies/projets/bioenergies/la-mede-un-site-tourne-vers-avenir?gclid=CjwKCAjwpIjZBRBsEiwA0TN1r0AEafQtoYBU_6K3ke04XasG

・関連記事(日本語):

ニコラ・ユロ、原発政策で批判を浴びる

グリフォサートに関するの日本語の記事:国際がん研究機関(IARC)は2015年3月20日に、除草剤グリホサートを「おそらく発ガン性物質」という2Aのカテゴリーに指定

 ・大企業のやることはいつも同じ?  Deforestation 危機的状況