ユベール・リーヴズ (Hubert Reeves)「もう何も我々を脅かすものはない 、我々以外は!」

Reporterreによるインタビューから:2017年12月23日〉

人間は生き残るために必要な情報よりもはるかに優れた知性を発達させてきたと、天体物理学者であり生態学者であるユベール・リーヴズ*は言う。しかし今日、「劣化」の勢いと「修復」の力のあいだに起きている競合の行方が不確実であるという点で、この人間の特質が我々の未来を直接脅かすものとなっている。

*ユベール・リーヴズ(Hubert Reeves、85、モントリオール生まれ、パリ在住)は、天体物理学者、科学コミュニケーター、フランス系カナダの生態学者だ。最近の著書に、『流れる時間のベンチ、宇宙の瞑想』(Seuil出版)がある。

**Reporterre:1989年発刊開始のフランスのエコロジー雑誌。

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Reporterre:最初のインタビューは1989年でしたが、あれからどう変化していますか。

H.R.:環境の劣化は続いており、森林伐採は相変わらずハイペースで行われ、公害は悪化しています。一方で、「緑の覚醒」と呼ぶ環境への認識が同時に強くなってきました。我々は今、劣化の力と修復させていく力の二つの力の葛藤の真っ只中にいるということができます。問題は劣化させてきた側面がより歴史的に根深く、修復する努力がまだ遅れていることです。30年後にこの状況がどのように地球を変えるか、誰も知りません。もっとひどくなるかもしれないし、改善していくのかもしれない。

Reporterre:どういった改善の兆候がありますか。

H.R.:例えば、再生可能エネルギーの開発です。 30年前は、人々は「それは夢の話だ」と言っていた。今日デンマークなどの国々では、再生可能エネルギーによって生産される電力が20%を占めるまでになっています。これは大変なことで、我々はこれらのエネルギーに頼ることができることが認識されたばかりではなく本当の可能性の領域に入ったのです。

また、私は数多くの高校や大学で話をしてきました。30年前は、私の生態学の講義に、儀礼的に数学の授業をサボって聞きに来たという学生がいましたが、今日、私は本当に真剣な聴衆と出会うようになり、授業は実に活気があります。またフランスでは、ますます多くの市町村が多大な努力をするようになりました。それらの多くはまた、農薬を拒否する我々の運動「オアシス・ネーチャー」にも参加しています。こんな風で、フットボールの試合が進んでいるのと同じで、どっちが勝つのかわからない。まるで「野戦」のようです。

これが現実なんでしょうね。私は、ナチスがすべての戦線で勝利して他国の文明が脅かされた1940年代の状況と比較できると思います。当時ある男 、つまり チャーチルがこう言った。 「断固、私は拒否する。それは終わりの始まりではなく、始まりの終わりだ」と。私たちは今、これと同様の重要な状況にあると思います。

今日決定されることが、何世紀にもわたって未来に影響を与えることになるでしょう

Reporterre:今日、チャーチルのような人はいますか。

H.R.:いません。しかし、米国のドナルド・トランプの政策あるいはブラジルで森林伐採が再開されたり、ロシアのように横暴で気候変動を信じない政体の行動を見ると、ポジティブな変化を検出することは困難です。実にトランプは問題です。

COP21は歴史的な出来事でした。 195カ国が一つの問題に同意した瞬間こそが、歴史的な出来事なのです。これに先立つ歴史的な出来事は、「人権宣言」でした。問題をどう解決するかはまた別の話ですが、すべての人々が一つの問題を解決することに同意するという事実が基本的なものです。

実際には、トランプは米国では積極的な役割も果たしました。というのは、国の頭首にこのような人間を戴くことに怒りを覚えた多くの州を揺り動かしたからで、例えば今やカリフォルニアは、ニュー・イングランドのように完全にエコロジーに賛同しています。彼らが行っている努力の全貌を見ると、実に驚かされます。

Reporterre:中国の発展をどのように分析しますか。

H.R.:中国は米国よりもずっと緑化しています。現在、エコロジーのための設備の最大の生産者は中国です。私には、中国はエコロジーの頂点にある国になるように思えます。

(…)

「金、金」。お金を儲けるという希求は古くからの人間の業です。ちっとも新しくはない。新しいのは、それが人間の未来を台無しにするという事実です。なぜなら、我々は地球を覆うほど多く強大だからです。一世紀前はそうではなかった。1950年代から、人間の活動が地球レベルでインパクトを与え、人間の未来を脅かすようになりました。それは特に乗り心地のいい自動車の大量生産によるものでしょう。1960年代、私はアメリカのNASAで仕事をしていました。そこでは大気に関する授業をしていた。James Hansenという人物がいて(1988年に警報を発した気候学者ですが)、彼とコーヒーを飲みに行ったとき、彼はこう言ったのです。「私は車の生産が伸びるスピードが心配だ」。皆は彼に、「冗談を言うなよ。地球は大きいんだから」と言ってたしなめた。が、彼は正しかった。あっという間に、放出される二酸化炭素の量がものすごい勢いで増加し始め、地球全体のバランスに影響を与え始めるレベルに達してしまった。「誇張のしすぎ、警戒しすぎ、だよ」とみんなが言っていたが、彼の方が正しかったんです。

Reporterre:敵は 「お金、お金」、つまり欲ですか。

H.R.:常にそれに戻ってきます。手っ取り早い利益を得るために森を伐採する。その後どうなるかなど、結果は関係ないという態度。しかし、こういう話があります。

数百万年前に、ある動物種が「自然」から「贈り物」を受け取ります。この贈り物は「知性」でした。すべての動物種の知性よりもはるかに大きい知性でした。他の動物種は、この知性において私たちの足元に及ぶものはありません。この知性は、生まれつき防御の乏しい人間を救うためのものでした。彼らには大きな歯もないし、爪も甲羅も蛇のような毒も持っていません。その知性がなければ、彼らは食べられてしまっていただろう。この時代の掟は、食うか食われるかですから。この知性でもって人間の歴史が始まる。武器の時代の始まりです。彼らはナイフや矢、槍などの単純な武器を作ることから始めた。これらの武器はプリミティブであったが、彼らを救った。そのうち大砲の火薬を発明する。爆弾を作り、しまいに原子爆弾を作った。そして、ヒロシマ。そこで何が起きたのか。自分らを救ってくれた知性が、自分自身を排除する可能性を孕む別の側面を明らかにしたのですよ。

さてもう一つ、スタニスラス・ペトロヴの話があります。ソ連時代の話です。彼は、アメリカが原子爆弾をソ連に向けて発射したという情報を入手した。それによると、核弾頭が15分で着弾するという。対処を急がなければならない。 核をもって報復開始を命令するのは彼の役目だったからです。しかし、彼は何もしないことを決めた。幸いにも、アメリカの核弾頭発射の情報は偽だったことが判明して事なきを得た。その後、一時は職務を果たさなかったことで彼は糾弾されたのだが、結局褒賞を受け、メダルをもらい、人類の救世者として称えられた。ここで考えなければならないのは、我々はたった一人の人の采配の下で生かされているという事実です。彼の判断が、我々を真の自滅から救ったのですから。

危険なのは自然ではなく、我々の発明です。我々人間は非常に強大であることを認識しなくてはいけない。我々の人口は凄まじく多い。我々は自分自身を危険に陥れているのです。今の問題は、人間は自分の力に対峙して生き残れるだろうかという点に収斂している。

現状の世界は、分からない。北朝鮮とアメリカのトランプ氏が危険極まりないゲームをしているし。

(…)

Reporterre:あなたは楽観的ですか?
H.R. :よく、若いカップルが私に尋ねます。「これらの脅威を前にして、将来子供を作るかどうか疑問です。あなたはどう思いますか」。私は答えの代わりに次のシオランの文を引用するのです。「人生からは何も期待しない」と。そして、私は彼らに尋ねるのです。「これまでに経験したことを考慮して、シオランに同意しますか。もし、あなたが彼に同意するならば、子供は作らないでください。またもし、あなたが彼に同意せず、そしてあなたが経験した困難にもかかわらず、苦労をした甲斐があったと思うなら、子供に生まれるチャンスを与えてください」と。

HervéKempfインタビュー

(2017年12月23日に行われたインタビューから)

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