ソフィー・カル & その招待アーティスト、セレナ・キャロンヌ

SOPHIE CALLE ET SON INVITÉE SERENA CARONE 「Beau doublé, Monsieur le marquis !」
2017年10月10日から2018年2月11日
パリ、狩猟・自然博物館

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2年前に亡くなった父親の話から始まるソフィー・カルの作品群は、展覧会の入り口からあっというまに見る者の心情を重ねてしまう特別な引力を持っているようだ。 「ボブ・カル。私の発表を最初から見守ってくれた人…」。「ボブが死んだ。まだ信じられない。携帯電話にはまだボブの電話番号が残っていて、見ているうちに通話ボタンに触ってしまった。すぐに切ったのだが、ボブから折り返しSMSが来た。” C qui (誰) ?”」


現代アートのコレクター、また美術評論家としても著名な父親のロベール・カルは、80年代中盤から90年代にかけてニームのキャレ・ダール現代美術館の収蔵品ディレクターを務め、ロベールよりは愛称のボブで親しまれていた。西洋のお化けのように白いシーツを被った熊の剥製が来館者を出迎え、死んだ父親へのオマージュから始まる個展は、パリの狩猟自然博物館の常設陳列物にはまりすぎるほどはまっている。死という命のもう一つの側面が、動物の剥製やそれらを撃ち殺した山ほどの銃器の陳列と呼応し、また作家と博物館とのフュージョンが新たな意味と形を生んで、オブジェたちや様々な思いが交錯する濃密な空間を醸し出している。

豊富な収蔵品で埋まる博物館の広さと奥深さに対応する展覧会を目指して、ソフィー・カルはニームのアーティスト、セレナ・キャロンヌを招待した。招待に応じて、セレナ・キャロンヌは、博物館に合わせた動物や人間中心にソフィー・カルとは視点の異なる 作品を見せ、ダイアログの厚みを増すことに成功しているようだ。

・プレス・リリースはこちら http://www.chassenature.org/wp-content/uploads/2016/07/DP-SCSC-CHASSE_NATURE-WEB.pdf

ソフィー・カル、狩猟自然博物館、パリ

 

ソフィー・カルとセレナ・キャロンヌ、Serena Carone et Sophie Calle, Deuil pour deuil, (2017) 病気で死んだ動物たちの剥製と・・・狩猟自然博物館、パリ

 

ソフィー・カル、何十と並ぶ猟銃の陳列室にインスタレーションされた人の顔写真には目隠しがされ、射撃の的になったような弾痕がある。狩猟自然博物館、パリ

 

 

セレナ・キャロンヌ、透明の涙がポタリポタリと落ちる、悲しみの胸像は自分自身か? 狩猟自然博物館、パリ

ソフィー・カル、狩猟自然博物館、パリ

 

セレナ・キャロンヌ(1958年生まれ)の、壁に穿たれた二つの目と自分の涙のプールの中に浸かる女性の胸像。不思議さとともに異次元の閉じた宇宙を感じさせる。

作品群は収蔵品と呼応する新制作だけではなく、最上階の白い展示室に過去の写真作品やオブジェが展示されている。

ちなみに狩猟自然博物館で現代アート展が開催されるようになったのはここ10年くらいだろうか。動物に関係した作家を選んで、常設展示をふんだんに活用して行われる現代アート展は質が高い。一昨年のベネチア・ビエンナーレのフランス館の作家にえらばれたセレスト・ブルスィエ=ムジュノのビデオやヤン・ファーブルのフクロウの頭、ジェフ・クーンズの瀬戸物の犬なども他の陳列物の中にさりげなく混じって置かれているのが却って新鮮に見えるのは私だけだろうか。

パリ狩猟自然博物館サイトはこちら http://www.chassenature.org

http://www.chassenature.org

 

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SOPHIE CALLE ET SON INVITÉE SERENA CARONE 「Beau doublé, Monsieur le marquis !」
コミッショナー : Sonia Voss

コンフェランス「ソフィー・カルから見たソフィー・カル」
SOPHIE CALLE PAR ELLE-MÊME
2017年11月22日、19時半から
予約:reservation@chassenature.org または、電話: 01 53 01 92 40
8 €、割引 6 €

ソフィー・カルの紹介はこちら http://www.chassenature.org/sophie-calle-et-son-invitee-serena-carone/

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